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「……どうしても、行かないとだめなのか」
押し殺した声でグロウが言った。
「別に髪の色が問題なんだったら染めたらいい話だろうが。出て行くほどでもない」
「それを言うならフレッドに言ってやれ。また撃たれるかもしれないからな。お前もできたらしばらくは色を変えておいた方がいい」
「だから! そういうことを言いたいんじゃねえよ!」
グロウは声を上げると、ジェイさんの胸ぐらを掴んだ。
「お前がずっと、家族奪った奴ら追いかけてるの知ってる! 絶対に復讐してやるって思ってることも! 俺はずっとそれを手伝ってやりたいって思ってたのに、どうしてお前が独りになるんだ!」
「グロウ……」
「戦うならデザート・ウルフの奴らと戦えばいい! あいつらだってお前を仲間だって認めてる! 協力だって――」
「――そう言って!」
ジェイさんは、グロウの叫びを遮るように、声を上げた。
「そう言って、あのチームを強くしようとした結果が、これじゃないか!」
ジェイさんの言葉に、グロウも、そして俺も息を呑んで言葉をなくした。
沈黙の降りた部屋に、彼の声が痛いくらいの残響になって、響く。
――この際デザート・ウルフの組織力を利用してやろうよ。
そう告げて、ジェイさんに話を持ちかけたのは、俺だ。
あの夜、今とほとんど同じ構図で、独りになろうとするジェイさんをつなぎ止めるために。
でもそれが、デザート・ウルフの名を売り、そしてどこからか二人の情報が、漏れた。
いや、どこからか、じゃない。
調子に乗って新聞に映ったことがある。
それ以外、考えられない。
つまり元を正せば、全部――
「……アレク」
俺の考えを読んだようにジェイさんが俺の名を呼んだ。
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