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「……もう、決めたんだな」
それまで静かに聞いていたグロウが、かすれた声で呟いた。
ジェイさんは静かに頷くと、まだ胸ぐらを掴んだままのグロウの頭を抱き寄せた。
「いなくなるなって言われたのに、結局、お前を一人にするな……悪い」
「独りになるのは、お前の方だろうが。謝るなよ」
「七年間、なんだかんだ言って楽しかったのは、お前のおかげだ。お前と、ラヴィのな。お前達がいなかったら、もっと暗い人間になってたかもしれない」
「ふざけんな。今でも十分暗いくせに、これ以上どうなるってんだよ」
「違いない」
はは、と声を上げてジェイさんが笑った。
グロウも、泣きそうな顔を必死に歪めて、笑う。
「ヨーロッパ行くならラヴェンダーには……会えねえか」
「会えないな。良家に引き取られた上にこっちは完全に日陰者決定だ。俺達はもう死んだ人間なんだから、それ以前のものは切り捨てざる得ない」
「あいつ、泣くかな」
「だろうな。意外に泣き虫だから」
「意外じぇねえよ。しょっちゅう泣いてるよ。お前が気づいてないだけだ、馬鹿」
「グロウに馬鹿扱いされるとは心外だぞ……でも、兄としては心配だな」
「ああ」
軽口は叩いていたけれど、どちらも離れようとはしなかった。
特にジェイさんが離れがたいようにずっと、友の身体を抱きしめていたから。
その理由は、すぐにわかることになる。
どちらからともなく手を離し、感情を抑えよう一つ息をついたグロウがこう問うたから。
「……いつ立つんだ?」
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