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部屋に呼びに来たフレッドに先導された俺は、アジトを歩いていた。
ちなみに要件は教えてもらっていない。
なので俺は自分より少し高い彼の背中を眺めながら、今日は特に緊急の案件はなかったはず、と記憶を探ってみた。
けれどそこでふっと琴線に引っかかるものを感じ、俺はうたた寝してしまう前の出来事を思い返した。
ああ――そう言えば、今夜暇か、グロウが聞いてきて、一方的に約束して出て行く、なんて出来事がありました。
と言うことは夜は予定あり、のはずなんだなあ、俺は。
「なあ、用ってなんなの?」
だから俺はフレッドの背中に問うてみた。
「ついてくればわかるよ」
すると返ってきたのはあまり答えになっていない言葉。
俺はもう少し詳しいところが聞きたくて、言い募った。
「俺、グロウになんかわけのわからない約束させられてるんだ。一応それに行かないと」
「そのグロウが呼んでる」
「……あっそ」
俺はそれっきり、追求するのを諦めた。
まあ俺とフレッドはいつもこんな感じだ。
つかず離れず。温度もそこそこに。
それはそれで楽な関係なんだよね。みんながみんなグロウみたいだと疲れるから。
――でも、フレッドも残ってくれたメンバーなんだよな。一応。
思い、俺は改めてその背中を眺めた。
ジェイさんが旅立ったあとの話にはなるんだけど。
ジョンから組織を任されたグロウもそんなに楽な日々ではなかったんだ。
なにせ元はジョンを慕って集まった人間で作られた組織だったし、デザート・ウルフのナンバーツーやスリーは別にいたからね。
フレッドがいくら証人だと言っても、聞いてもらえなかった。
結果としてナンバーツーとスリーの派閥に別れて抗争が勃発してしまって、事実上デザート・ウルフは崩壊したと言っても過言じゃない。
ただ、グロウはあの時、ジョンから託されたものがあったから。
必死で残ったメンバーかき集めて、抗争に敗れて傷ついたメンバーも呼び寄せて、新しい組織を作った。
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