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――その雨の日から五年。
チームの中の人は大分入れ替わり、抗争の被害者やそもそもの母体であるデザート・ウルフのメンバーは大分抜けていた。
フレッドみたいな古参のメンバーはもうほとんどいない。
代わりにグロウや俺がほとんど最年長組になっていて、チームメンバーの大半も純粋にグロウの人柄に惹かれて集まってきていた人達になっている。
グロウも暇さえあればスラムの子供達と遊んでやってるからね。
遊んで貰った子供がそのままあこがれて――ってパターンが結構あるんだ。
つまり将来的なことを考えると、これからどんどん人数が増えていくってことになるんだけど、参謀兼経理担当というか、運営担当の俺としては少し頭が痛い。
増えた分の人の配置どうするのかとか、養うなら食い扶持をどう稼ぐか、とか悩まないといけないわけよ。
で、独り台所――気分は主婦だからか、フェイの家がキッチンとリビングがくっついてたからか、そういう考え事の時はそこが落ち着くの――で悩んでると、いつの間にかフレッドが側に来ていて本を読んでいた。
なんてことが良くある。
運営とかに口を出してこないし出せない分、そういう気の遣い方をしているみたい。
あと、なんでも、このままでは俺が過労で倒れるとか言う噂もあるらしくて、時々ちまいのがきて無理矢理外に連れ出されたりする。
緊急を要する案件がある時はすごく困るんだけど、まあがんばりが認められてる、と言うことかなあと判断して、そういう気遣いは受けることにしているんだ。
――七年前の約束は結局果たせなかった。
でも、デザート・ウルフではなくスラム全体では、子供達を助けてあげられてる。
そう思ったら、少しはジョンも、許してくれるかな。
そうだと嬉しいと思う。
そうだったら少しは――救われる。
「……ん」
不意にフレッドが立ち止まって、一つの部屋をあごで示した。
「ここでグロウが呼んでるの?」
「ああ」
「てか、用があるなら自分で来ればいいのに……」
ぶつぶつと言いながら俺は扉を開いた。
その瞬間だ。
パアン!
破砕音が俺を襲った。
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