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びっくりして俺が立ちすくむと、断続的にいくつもいくつも、音が重ねられる。
そうして俺はその破砕音の犯人達から飛び出してきたリボンであっという間にぐるぐるになってしまった。
「え? ええ?」
突然の事態に呆然とする俺に、そこにいたメンバー全員が、誰かの言った「せーの」に合わせて事情を教えてくれる。
「ハッピーバースデー! アレク!」
「えええ!?」
声を上げて、それから俺は今日の日付を頭の中に思い描いてみた。
十月十二日――おお!
確かに俺の誕生日!
「へっへ~。こういうサプライズだったわけよ」
俺の後ろにいたフレッドが、俺の肩に腕をかけて言った。
そう、やけにフレッドの言葉が少ないな、とは思ってたんだよね。
今日はなんかあったんだろうか、て、ちょっと心配してたんだけど。
ばれないように言葉を発しないようにしていたわけか。
「アレクが好きだって言うショートケーキもホールで買ってきてるぜ!」
奥にいたグロウがぶんぶんと腕を振って言う。
て、ちょっとちょっと!
隣でケーキ載せた机が、ぐらっぐらいってる!
「ちょっとグロウ! ケーキが危ないじゃない! 気をつけなさいよね!」
すると俺が指摘するより前に、グロウのやたらでかい身体の影から小柄な女性がすり出てきて、ケーキを載せたテーブルを抑えた。
「ラヴェンダーさん! わざわざいらしてくださったんですか?」
「ええ。せっかくのアレクのバースデーパーティですもの。とっておきのドレスを着て参加させてもらったわ」
そう言ってグロウの前に進み出るとふわりと一周回って見せた。
ラヴェンダーさんが着ていたのは淡い紫色のカクテルドレス。
胸と背中が少し大胆に開いているけれど、腰から下がふんわりと膨らんでいて、膝上で波打つ深い紫色のレースの裏地と相まって可愛らしい印象がある。
うーん。
確かにすごく可愛いらしい――んだけど。
こういうところに着てくるには大分危険かも。
ほら、あまり女の子慣れしてないBlaze Wolfのメンバーの目の色変わってる。
「お前、ストール巻いておけ」
するとさりげなく隣に立ったジェイさんが、シルバーのストールをラヴェンダーさんに手渡した。
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