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……あれ?
今のってどういうこと?
「冷えるだろうから」
「いらないわよ」
「いいから!」
言いながら、少しジェイさんはいらっとしているようだった。
「なによぉう」
ラヴェンダーさんは唇をとがらせながらも、あまりにしつこくジェイさんが言うので結局そのストールを受け取った。
輝くパールのようだった白い肌が無粋なストールに隠されてしまい、集まっていた男連中から落胆のため息が漏れる。
――俺はその様子をつぶさに見えていたんだけど。
まあ、これだけじゃ、何とも言えないから、ジェイさんの行動は気にしないことにしよう。
と結論づけて考えないことにした。
だってなんかあの二人相手にそういう邪推するのって……怖いじゃない?
だから俺はそういう考えを一切閉め出してジェイさんの前に立った。
彼は常に着ている黒いシャツの上に、やっぱり常に着ているアイス・グリーンのジャケットを着ていた。
うーん、グロウはセンスがいいのかぶっちゃけ微妙、とか言うけども。
これを着こなせるだけかっこいいと思うんだけどね、俺は。
「ジェイさんも来てくださったんですね」
俺は二人のやりとりが落ち着くのを見計らってからそう告げた。
「俺もラヴィと同じだ。アレクのお祝いだったらどこにいたって駆けつけるさ」
そう告げたジェイさんの眼差しには、ラヴェンダーさんが言うのとは全く別の重さがあった。
――俺達の間には、七年前の別離が横たわっている。
泣きながら出て行く彼の背中を見送って七年。
今こうして近い目線で話せること、軽口をたたけること。
その全てが、奇跡のようだった。
一時は本気で、もう二度と彼には会えない、とすら思ったのだから。
「お会いできて、嬉しいです」
「……頼むから」
がしがしと気まずそうに金髪を掻いてジェイさんが言った。
「昔みたいに話してくれないか? アレクに敬語使われるの、歯がゆい感じがする」
「……俺のこと一体どういうキャラだと思ってるんですか」
でも言われてみたら、七年前は一切敬語なんて使っていなかった。
勝手に線を引くのは良くないよね。
「じゃあ、ジェイさん。来てもらえて嬉しいよ」
「ああ」
そう言って、ジェイさんは俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
……こっちももう二十歳超えた大人なんで、そこまで昔に戻られるのは正直微妙な気分だったんだけど。
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