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そこからはもうパーティは無礼講。
それぞれやりたいように飲んで歌って、方々に楽しんでいた。
誰かがかけたプレイヤーからはアップテンポな音楽が流れ始めたら、なんとなくクラブのような様相を呈してきて。
するとまた別の誰かが気を利かせたらしく、照明の明るさも落とされた。
俺はそれをいいことに、ある程度挨拶がすんだ後は部屋の隅に引きこもってちびちびとワインを飲むことにした。
ジョンのことを思い出したりしたのもあって、何となく誰かと飲むような気分じゃ、なかったんだ。
「――ちょっマジで、離してくれ!」
するとその俺がいるのと逆側の部屋の隅で声が上がる。
グロウが銀色の髪の女性に捕まっているところだった。
あれは、フェリスさんか。
確かラヴェンダーさんの友人で、シュヴァルツ・カッツェのメンバーだったはず。
どうしてお嬢様のはずの彼女がここに来ているのかわからないけど、どうやらグロウが目当てだったみたいだね。
うーん、世の中わからないものだなあ。
そんなことを考えながら、俺は逃げようとあがいて揺れるグロウの朱色の髪を眺めた。
――あれから、髪の色こそジェイさんのアドバイスに従って何回か変えたけど、髪型はずっとあの、つんつん頭だ。
多分、一生そうなんだろうと思う。
あの髪型がグロウの背負った十字架の形だから――
「おいおい。主役がこんなところに引きこもるなよ」
不意に声が降ってきて、俺は顔を上げた。
「ジェイさん」
「改めてハッピーバースデー、アレク」
そう言ってグラスを差し出してくるので、俺は軽く手にしていたグラスを持ち上げた。
「なんか最近ばたばたしてるらしいけど、休んでるか?」
「休んでるよ……今日はその休憩を、思い切りグロウに邪魔されたけど」
「それは……」
呟いてジェイさんはグロウを見た。
全くと言っていいほどラヴェンダーさん以外の女性の免疫のないグロウは、ロゼワインみたいに真っ赤になってしまっている。
「あいつ、そういう空気察するのは苦手だからなあ」
「知ってる」
言って俺は笑った。
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