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確かにチームは作った。彼が宣言していたとおりかなりの武闘派だ。戦闘テクニックも機材も充実している。その資金源を稼ぐための事業もきっちりしているらしい。
だけど、俺の目には、ジェイさんの孤独はさらに増したようにしか、見えない。
何か彼の中の大きな軸が揺らいで、崩れかけていて、それを保つために必死に走っている。
そんな感じに見えるんだ。
戦うことも、敵に立ち向かうことも、揺らいだ何かをごまかすためで。
そうすることで何とか、立っていられている――そんな風にすら見える。
でもそれはあまりに危険なんだ。
目隠しをされた馬のようなもの。
いや、獣でもいい。
怪我を負ってしかも目隠しをされて、それなのに敵がそこにいるからと走って走って走って走って――
そうして崖に向かって突き進んでいるような、そんな姿のように見える。
――怖い。すごく怖いんだ。
七年前、全てに距離を取ろうとしていたジェイさんを見た時よりもずっと。
彼はこのまま、死の女神が腕を広げて待つ崖の先まで駆け去って行ってしまいそうで、怖い。
多分それは俺では留められない。
誰か……誰か彼を――
「ア~レク?」
突然視界に赤いものがよぎって、俺はびくり、となった。
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