62人が本棚に入れています
本棚に追加
だって笑うしかないでしょ。
悩んでいたのが馬鹿みたいだ。
彼を助けられる誰か――それは、グロウのことなのか。
ううん。もう一人、いるよね。
またストールを脱いで、ジェイさん本人からぶちぶち言われているラヴェンダーさんもだ。
多分二人とも全力でジェイさんに関わりに行って、それで多分彼をこっちに引き戻してこられる唯一の人達なんだ。
だからジェイさんは何とか立ち止まっていられる。
なんて危うくも、強いつながりなんだろう!
「あっはは」
「おい、アレク?」
突然笑い出した俺に、グロウがいぶかしげな眼差しを向けてくる。
でも俺は答えるのも面倒で、笑いの余韻を唇に残したままワインを飲んだ。
彼らが過ごした、七年。
俺がグロウと過ごした七年。
その間にそれぞれが築いたものは、単純に時間だけでは単純に比較できないんだ。
俺にはない絆でつながっているからこそ、彼らはジェイさんを引き戻せる。
そして彼らにはない絆があるからこそ、俺はグロウとこのチームを護っていける。
「グロウ?」
「な、なんだ?」
「俺さ、グロウと出会えて良かったよ?」
俺の突然の言葉に、グロウが驚いたように目を見張る。
それから何故か左右をきょろきょろして、ひそっとした声で囁いてくる。
「お前、そういう発言やめろよな。死亡フラグって言うんだぜ、そういうの。誰か聞いてたらどうするんだ」
その、意味のわかない忠告に俺はむっとなった。
死亡フラグって誰かに聞かれたらまずいとかじゃないし。
て、いやいやいや、そこじゃなくて、だ。
「俺の純粋な好意を、そういう風に取るわけね、グロウは」
「あ……」
「せっかく開いてくれた誕生日会に感謝しての言葉だったのにさ。もういいよ」
言うと、俺は立ち上がった。
ちょうどすぐ側にグロウを探しているらしいフェリスさんがいたので、居場所を教えてやる。
「アレク!」
非難の声が上がったけど、気にしないもんね。
ぺろり、と舌を出すと、俺は、またフェリスさんに絡まれて困りはてたような声を上げるグロウの側を後にした。
そのまま少し酔いを覚ましたかった俺は廊下に出ると、突き当たりの窓を開けて空を見上げた。
あの葬送の日のように雲一つない星空が広がっている。
その空に向かって俺は呼びかけた。
最初のコメントを投稿しよう!