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なぜかって、何かにつけてその距離を置きたいはずの朱色が、
『ちょっと聞いてくれよアレク~。ジェイがひどいんだぜ~』
とか、
『本ばっか読んでるとジェイみたいに暗くなるぞ! 俺とキャッチボールしようぜ!』
と腕を引いて外に連れ出そうとしたりしてきたから。
なにをどこをどうしたのかわからないけど、朱色にひどく気に入られてしまったようだったんだ。
まあ、キャッチボールに関しては若草色どころかフェイからも『怪我人はおとなしくしろ』と怒られて、実現することはなかったわけだけど。
それ以外は朱色が俺に何かにつけて絡んでくることに関して、若草色は特に口を出すことはなかったし、むしろおもしろがって彼の方から巻き込んでくることすらあった。
そうして、気づいたらすっかり二人の間に挟まれる構図ができあがってしまっていたんだ。
参っちゃうよね。
――ただ、今思えば、だけども。
二人とも、たぶん『二人』という数がとても居心地が悪かったんじゃないかな。
それまでずっと『三人』でいたはずなのに、一人欠けてしまったから。
二人でいてもどこかバランスが悪くて、ぽっかり空いた隙間みたいなのが気持ち悪くて、そこにちょうど俺がいたから、その欠けたバランスの部分にはめ込もうとしたーー
そう考えると、あの不思議なくらい俺に絡んできた態度も理解できる。
だってそうでもなきゃ、素直に友達になりたいと思えるほど可愛げのある子供でもなかったしね、当時の俺。
ひねくれてるし言葉悪いし。
気に入ってくれたのなんて同じひねくれ者くらいだったから。
もちろんそんなこと、当時の俺も気づいていなかったし、たぶん二人自身も気づいていなかっただろうけどさ。
いや、気づいていないのは朱色の馬鹿だけで、策士的なところのある若草色は気づいていたのかな。
だから意図的に巻き込もうとしたのか。
……もう、今となっては聞けないし、触れられないことだけど。
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