2)災害が忘れた頃にやってきた

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 そう考えるとこの当時の二人はどこか――切ないと思う。  でも二人の中にそんな寂しさが凝っていたからこそ、俺はその輪の中に受け入れられて生き様も変わっていくわけだから、人生わからない。  袖振り合うも多生の縁とは本当によく言ったものだ。  ――けども。  口には絶対出してやらなかったけど実は一週間、不覚にも、結構楽しかったものだから、俺ってばすっかり忘れていたんだよね。  そもそも、なんで俺は二人に出会ったのかってこと。  そうして彼は、忘れた頃に俺の前にやってきたんだ。     □ ■ □ ■ 「アレク、いるか?」  ブザーみたいな呼び鈴が鳴って、絶対にでやしないフェイと俺以外の居候の代わりに俺が玄関に立つと、そんな言葉と同時にぬ、と影がさした。  ひょろっこい体にぼさぼさの金髪、鼻の上に浮いたそばかす。  俺はその姿を見て回れ右しそうになった。  その時初めて思い出したんだ。  なんで俺はグロウ達にぶつかりにいったのかって。  そもそもこの二つ年上のフレッドに言われて、スリの実践訓練するためだったんだ。  そのスリの実戦訓練も、俺が言い出したものでもフレッドが勧めたものでもなく、チームのリーダーのジョンが言い出しっぺだったから、それをほっぽらかして一週間のうのうと過ごしていたのはとてもまずかった。  だって現に、フレッドってばところどころアザだらけじゃない?  絶対、これ、ジョンに罰として殴られたんだ。  しかも、いつも弱気に泳いでる彼の青い目に、珍しく怒りの色が浮かんでいる。  それを見て俺は、さすがに覚悟を決めた。  これは、ジョンのところに釈明に行かねばなるまい。 「ジョンが呼んでる」  思った矢先に想像通りの言葉を言われて、俺はため息をついた。   「わかった。行くよ」  答えると、家の中の方を振り返った。 「フェイ! ちょっと俺、出てくる!」  声をかけると、ひょい、と廊下に顔を出したのはあの変わり者の医者ではなく、どうしてか彼の部屋に入り浸っていることが多いジェイさんだった。 「どこかでかけるのか?」  いいながら彼はリビングまで出てきて足を止める。
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