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どこか警戒したようなまなざしを網戸張りの内扉の外に向けて、それから緊張した声で俺に問うてきた。
「……友達?」
「うん、まあね」
俺が答えると、ジェイさんはどこかほっとしたように瞳を緩ませた。
対して俺は、少しばつが悪くなって俯いてしまう。
変な話なんだけど、家出とかしておいて十分ぐれてるくせに、こんな悪い友達とつきあってるなんてこと、どうしてかジェイさんに知られたくないと思ってる自分がいたんだ。
「もしかしたら遅くなるかもしれないから、ご飯の調達は自分でやってね」
「……ああ、それはいいけど」
明らかに尋常じゃない雰囲気のフレッドを前に、ジェイさんが戸惑っているのがわかって、俺はさっさと退散しようと内扉の鍵に手をかけた。
その時だ。
「こいつあの時の……!」
フレッドが、抑えた声で呟くのが聞こえた。
それに俺は、天を仰ぎたい気分だった。
あいたたたた。
やっぱり、ばれちゃった。
あ~あ、みるみるフレッドの顔が険しくなってくよ。
そりゃそうだよね。
あの時俺に、この二人にスリしろって命令したおかげで回り回ってフレッドはジョンに殴られたわけだし。
そんなのと俺が仲良さげにしてたら、イラっともするでしょう。
て言ってもさ、本当は俺をほっぽいて先に逃げたのはフレッドだから、俺は悪くないはずなんだよ。正直言えばさ。
まあ怒ってる人間に何言っても聞かないし、火に油注ぐだけだから言わないけどね。
「来い!」
内扉の鍵が開くのと同時に、そう言ってフレッドが強引に俺の手を引き、俺は引きずられるようにして連れ出された。
振り返ると玄関で立ち尽くすジェイさんの姿が見える。
俺はたぶん大丈夫だから、頼むからあの熱血馬鹿にこの惨状は知らせないでほしい。
と言っても無駄なんだろうなあ、と何故かその時、見送ったジェイさんではなく、あの熱血馬鹿のことを思った。
□ ■ □ ■
俺がそれから、身長差のせいで引きずられるようにして路地を歩いていた頃、難しい顔をしたジェイさんは腕を組みながらフェイの部屋に戻っていた。
「Dr.フェイ、ちょっといいか?」
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