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「ダチが困ってんだ! 助けに行くのにそれ以上の理由はねえだろ!」
グロウが叫ぶと、フェイは先ほどまでジェイさんに向けていたのと一転して、表情を消した顔でグロウに問いかけた。
「助けに行く気かね? 今の話を聞いても?」
「当たり前だ!」
けれどもそれに、鼻息も荒くグロウは即答する。
「そちらの君はどうする気だね?」
今度は再びジェイさんの方に向き直り、フェイは問うた。
「……俺は」
「行くだろ、ジェイ!」
ジェイさんの呟きに重ねるようにグロウが叫ぶ。
「もしラヴィが同じ目に遭ってたら、お前なら行くだろ! それと同じだ! 道が間違ってるって言うなら、引っ張り戻してやればいいだけだ!」
「お前……」
あくまでも熱いグロウの言葉に、ジェイさんは目元に手を当てた。
重いため息を一つつく。
「これだから、脊髄反射の馬鹿には困るんだ」
「なんだと!?」
「だが、おかげで大切なことを思い出せた」
そう言ってアイス・グリーンの瞳を緩ませると、フェイに向き直った。
「行くよ。たとえきっかけがどんなであっても、友達、らしいからな」
ジェイさんが答えると、フェイは興味深げに目を細め、それから笑った。
「なるほど、見る目がまるでないわけではないらしい」
「なんだと?」
「実を言えばアレクのお父上から家に戻るよう更生させてほしいと頼まれていてね。ちょろっと行って君達が引っ張り戻してやってくれ」
「ちょろっとって、てめえ、なんだそのノリは」
あまりに軽いのりでフェイが言うので、グロウはさらに頭に血を上らせて拳を握りしめる。
それが点滴針の刺さった方なものだからますます血がチューブを逆流していく。
横で見ていたジェイさんはとりあえず点滴ポールを立てると、グロウを落ち着かせようと右腕をたたいた。
「お前は少し落ち着け。そして点滴を止めてもらえ、もう」
「邪魔すんな、ジェイ」
「よく見ろ。逆流してるから」
「うおっ本当だ! おっさん、止めてくれ!」
「やれやれ、私はまだ三十代なんだがね」
ぶつぶつと呟きながらも、フェイは素直に依頼に応じ、点滴の針を抜くと消毒をしてカット板を貼ってくれる。
「簡単に行き先の地図は書いた。行くならとっとと行ってやれ」
そして万年筆でさらさらと紙に地図を書くと、それを手渡してくれる。
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