2)災害が忘れた頃にやってきた

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      □ ■ □ ■  ジョンがいる、という部屋はこぢんまりとした個室で、このアジトの中で唯一パソコンが置いてある部屋だった。    こんなスラムのアジトに、と思うかもしれないけど、パソコンなんて手に入れようと思えばいくらでも手に入るもんなんだ。    企業のリースが切れたものとか、故障を理由にリサイクル業者に引き取られるパソコンって結構多くて、それがどこに運ばれるかさえ把握しておけば材料は手に入る。  あとは一番状況が良さそうなものを選んで直せばいい。  まあ、拾ってくるのは別として、そういう提案していじって直したのは俺なんだけどさ。    しかも大声じゃ言えないけど無線LANの機器も拾ってきて、どこかから飛ばされている回線を内緒で拝借してる。    環境としてはなかなかなんだよね、ここ。    と言ってもメンバーのほとんどはネットをいじることはない。  大概はジョンが占有していて使わせてもらえないから、というのもあるし、学校にもあまり行っていないメンバーが多いのでPCそのものの使い道がわからないのだ。  今時の若者は常にネットに接続してないと気がすまないだとか言われているけど、それすらひとくくりでくくれないのが今のアメリカ、なんだ。 「ジョン。アレクを連れてきた」  フレッドが言って、俺を前に引っ張り出す。  雑を通り越して乱暴な扱いによろけたところをドン、とフレッドに押されたので、さすがに今回ばかりは立て直せず、俺は膝をついて転んだ。  ごん、とフローリングにしたたかに膝を打ち付けて、俺は痛みに思わず声を上げそうになる。  でもほぼ同時にPCの前に向かっていたジョンが椅子を回してこちらに向いたので、俺は慌てて顔を上げた。
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