2)災害が忘れた頃にやってきた

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 そこにいたのは、座っていてもその大きさがわかるほどの、6フィート(182センチほど)を優に超す巨漢だった。  今でこそグロウもそのくらいを超えているけれど当時はまだ身長が伸びきっていなかったから、この時は遙かにジョンの方が背が高く、そして横にも恰幅があったので迫力は十分だった。  俺はワックスで前髪から持ち上げてつんつんのとげのように固められた栗色の髪と首に入ったタトゥの柄に視線を当て、ゴクリ、と息を呑んだ。  可愛がってもらえていた時はあまり感じなかったけど、こうして険しい顔で見下ろしてくる巨漢ピアスたくさんタトゥ兄ちゃんってマジで怖い。  ジョンの体型から見て、デザート・ウルフって、砂漠(desert)じゃなくてスイーツの方のデザート(dessert)としか思えないよな~とか思ってたけど。  ウルフって言うよりイノシシっぽいとか思ってたけど。  うん、やっぱりストリートキッズのボスだけあるよ。  ちょっと馬鹿にしててごめんなさい。    て、現実逃避しても怖いものは怖い。  もう言わないから見逃してほしいとちょっと本気で思ってしまう。 「……ずいぶんと久しぶりだなあ、アレク」  ギシ、と音を立てて椅子から立ち上がったジョンから投げかけられた言葉に、俺は思わず視線をそらした。  しかもやばい、この声は本当に怒ってる。    メンバーが何かミスしたとか、何かでジョンの怒りを買った時に、彼がブチ切れる直前に出すような声だ。   「そこの馬鹿がお前をおいて逃げてきたって言うからぶん殴って探してこいって言ったんだけどな」  そう言ってジョンはあごをしゃくってフレッドを示す。  俺は、えっ、と思わず振り返った。  その傷って、それなわけ?  不服そうなフレッドは俺の視線を受けてふい、と横を向いた。  俺が一週間ほっつき歩いていたせいの監督不行届で殴られたのかと思ったのに。  でも、じゃあなんでジョンはこんなに怒ってるんだ?  俺が再び視線をジョンに戻すのと、ジョンが俺の胸ぐらを掴んで無理矢理引き立たせるのとはほぼ同時だった。
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