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「でも、お前、あのコリアンの闇医者のところに入院してるマフィアのボスんところに入り浸ってるらしいな、最近」
ほとんど宙に持ち上げられるような状態で顔を近づけて言うジョンに、俺は大きく目を見開いた。
「マフィアの、ボス?」
「とぼけたふりしても無駄だ。ここら辺じゃもっぱらの噂だ。なんかの抗争で大けが負ったらしいマフィアのボスが闇医者のところに入院したってのも、そいつに寝返ったお前が入り浸ってるってのもな」
「寝返ってって……いや、それ以前に俺、前からフェイのところで寝泊まりしてたじゃないか!」
「それもよりいい物件と知り合うためだったんだろうが」
「違う! 単にフェイは母さんが働いてた病院にいて……」
「--今ちまたで俺がなんて言われてるか知ってるか?」
俺の言葉を遮ったジョンはそう言うと、鳶色の眼差しをいっそう厳しくして俺を睨んだ。
「『デザート・ウルフのボスはコリアンにハクづけのために利用されて、利用価値がなくなったから捨てられた』って言われてるんだ。この、俺が!」
語尾に力を込めると、ジョンは俺の身体を壁にたたきつけた。
衝撃に備えてとっさに身体に力を入れるけれど、壁に打ち付けられた瞬間肺が圧迫されて息が詰まる。
「かっは……」
思わず喉から息が漏れて、すぐに咳き込んだ。
けれどそうして呼吸を取り戻そうとする俺の胸の上に、ジョンの大きな足が降ってくる。
「うっ」
「ずいぶんとこけにしてくれたなあ、アレク。せっかく可愛がってやった恩を仇で返しやがって」
「ちが……」
反論しようとするところを、思い切り踏みつけられて、俺は言葉を封じられた。
ミシリ、と肋骨がきしんで息が詰まる。
反論はたくさんあった。
俺はコリアンじゃないし、何よりジェイさんとあの赤い馬鹿がマフィアのボスなわけがなかった。
確かに銃を持ってはいたけど、若かったし、何より元々すさんだ環境にいたような人間に思えなかった。
ここのデザート・ウルフの面々に比べたらあまりに真っ当すぎるくらいの空気を持っていた。
あの二人がマフィアの人間だなんてそんなこと、あるわけがないんだ。
だけど--
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