2)災害が忘れた頃にやってきた

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「少しは痛い目見てもらわないとなあ」  そう言ってぐいぐいとジョンが足に力を込めてくるから、歯を食いしばって耐えるので精一杯で、とてもじゃないけど言葉を紡ぐ余裕なんてなかった。  なんとか、反論を聞いてもらうしかないとあがこうとするけど、とにかく体格差がありすぎた。  せめて、向かい合っていたなら何とか対策もとれたんだけど--  そんな風に、俺が痛みに耐えながら思いを巡らせていた時だ。  激しい音と共に隣の部屋で扉が開くような音が聞こえた。  同時にざわり、とそちらの部屋でざわめきが起こる気配もする。 「なんだてめえらは!」  扉越しに、誰かの上げたくぐもった声がする。 「アレクを出せ!」  それに応じたのは、若い男の声で。  俺の聞き間違いじゃなければ、ここ一週間くらい面倒くさいくらいに絡みついてきたやつのもののようだった。 「なんだあ?」  その騒ぎはもちろんジョンの耳にも届いていて、彼の足から少し力が抜ける。  俺がそこから抜け出そうとするのと、「ボス!」という声と共に扉が開くのはほぼ同時だった。 「例のマフィアが、アレクを取り戻しにきました!」  床を転がって、何とかジョンの足の下から抜け出した俺は咳き込みながら顔を上げて、そうして見た。 「アレク!」  声を上げる赤い馬鹿と、ひょうひょうとした顔で周囲を見回している薄い金髪の青年の姿を。
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