2)災害が忘れた頃にやってきた

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「ジェイさん……グロウ……」  咳き込んだせいで涙目になってゆがんだ視界の中にいたのは、間違いなくあの二人だった。 「どうして……」  その呟きは、いきり立って周囲を威嚇している赤い馬鹿には聞こえていないようだった。  代わりに、その横に立つジェイさんがこちらに視線を当てて苦笑を浮かべてくる。  言葉はなかったけれど、まるで彼の声が聞こえてくるかのようにその苦笑の意味が俺にはわかった。 『この馬鹿が、行くって聞かなかったからな』  だけど、たとえそれが真実だったとしてもジェイさんまで来る必要はなかったはずだ。  それは、グロウが心配だったからなのか。  それとも-- 「てめえらか、コリアンのところにいるって言うマフィアのボスは」 「あ?」  周囲に感化されてか柄の悪い声を上げ、グロウはジョンを見た。 「どれだけでかい組織かしらねえが、たった二人ぽっちで乗り込んでくるとは俺たちデザート・ウルフも馬鹿にされたもんだな」  威厳の演出のためか意識的にゆっくりとした足取りで大部屋に足を運ぶジョンを、グロウはぽかんと見上げ、それから視線を下に向けてぺろんと巡らせた。 「デザート・ウルフ?」 「そうだ。こう見えてこのスラムじゃ結構名が売れたチームなんだよ」 「そりゃ、そうだろうなあ」  呆然とグロウは呟き、やっぱりまじまじとジョンの姿を眺めていた。 「そんな思い切ったネーミングされたら、みんな気になるって」 「そ、そうか?」  そこで少し照れてしまうところがジョンの可愛いところだったりするのだが、そんな彼もすぐにブチぎれることになる。  グロウの、無神経な一言によって。
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