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「今のは俺が悪かった。謝る。悪い。でも、アレクの話は別だ」
「ああ?」
「俺らがマフィアのボスとかの意味はわかんねえけど、とりあえずアレクは俺らのダチなんだ。痛めつけるんだったら返してもらう」
「それこそふざけるなよ。チームメンバーになめられてそのままにしておいたら俺の示しがつかないんだよ」
「だから、提案だって」
言うと、グロウはやけに自信満々に腕を組んだ。
ずい、と一歩前に踏み出す。
後ろで背中を見守る羽目になったジェイさんの眼鏡の中の眼差しは、明らかに不安に揺らいでいる。
「俺とタイマン勝負だ!」
「はあ?」
声を上げてしまったのは俺の方だった。
思わずジェイさんを見る。
すると視線の意味を察したのだろう、ジェイさんが横に首を振る。
――喧嘩の経験はほとんどないってことね。
それなのに、何考えてるんだ、こいつ。
「あんたと俺がタイマンで戦って俺が勝った上でアレクを返してもらうんなら、あんたの言うメンツってやつも傷つかないだろ。その代わり俺が負けたらパシリにでもサウンドバックにでも何でもしてくれ」
「おい、グロウ!」
さすがに青ざめたジェイさんがグロウの肩を引いた。
でも、グロウはそれを振り払うと、キッとジョンを見据える。
「どうなんだ? 受けるか受けないか。あんたもチーム率いるボスなら正々堂々一番かっこいい方を選びな」
挑戦的な言葉に、何か打算を考えていたらしいジョンは頬をこわばらせた。
ボスなら正々堂々かっこいい方をーー
これほどの殺し文句はあるまい。
案の定ジョンはふっと笑うと、腕を組んだ。
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