62人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ
「そこまで言うなら、乗ってやろうじゃないか。決闘だ」
「おう」
「俺は結構強いからな。そんな勝負を投げかけてきたことを後悔させてやる」
そう言って、何故かジョンは部屋の奥の方に身を翻す。
「どこ行くんだ?」
「決闘するなら、それなりの身支度が必要だからな」
ジョンが言うと、メンバーが色めき立った。
「おお、ボスがあのコスチュームを出すと言うことは本気だ!」
「赤毛のやつ、泣きを見るぞ」
そんな面々の少し興奮した言葉を聞き、今度はジェイさんが俺の方に視線を当てる。
けれど俺は首を振った。
ここに入り浸って結構経つけど、平均で言ったら日は浅い方だ。
そもそもジョンが誰かと喧嘩するところすら見たことすらない。
ジョンの実力は未知数なのだ。
「--待たせたな」
そう言って現れたジョンはオレンジ色のVネックTシャツと少しゆったりとしたズボンを着ていた。
そしてそのでっぷりとした(真実表記)腹を紺の帯で止めている。
俺はその姿を見て、絶句した。
あごが落ちそうになる、って比喩表現があるけど、本当にそんな感じだった。
ぽかーんと開いた口がふさがらなかった。
何に驚かされたってその胸と背中に大きく描いてあった模様。
黒い太い線で円が書いてあって、そこに文字が書いてあったんだけど、それに俺は驚かされたんだ。
「でたぞ、ボスが昔修行した先の師匠から免許皆伝の印代わりにもらったというシャツが」
「あれがでるってことは必殺技も見られるのか」
なんて、チームメンバーは囁きあっている。
俺の側に立っていたフレッドなんかは目を輝かせて尊敬の眼差しをその背中に送ってすらいる。
--もう、どこをどうつっこんでいいのかわからない。
修行に出たというのが嘘なのか、それとも修行に出たのは本当だけど師匠がインチキだったのか。
どちらにせよ、あまりに痛々しすぎる姿だった。
だって、さ。
だってだよ?
明らかに某有名アニメのコスチュームをパクったとしか思えないそのオレンジのTシャツの円の中の文字。
最初のコメントを投稿しよう!