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萌❤
萌って……
萌って書いてあるんだよ!!!!
ねえ!
それ何流派!?
アキハバラ流とか!?
俺が暇つぶしでつなげたネットにはまったジョンが、ずっと日本のアニメ見てたの、実は俺知ってるよ。
日本のムービーサイトにまでアクセスして、毎週毎週新しいアニメがアップされるとそれをチェックしてるのも知ってる。
でも、それはない。
それはないよ、ジョン。
周りの士気は上がっても、俺の中でダダ下がりだよ。
萌Tって………!
「さあ、勝負だ」
無意味に堂々とした風格でジョンが言う前で、グロウは気圧されたように一歩足を引き、ジェイさんはその方に手をかけて何かを囁きかけている。
あれはたぶんまずいとか、強そうだとか、そんな会話だろう。
それを見て、俺は茫然自失から立ち直ると今度は四つん這いのままがっくりと頭を垂れた。
ああ、そうか。
この中で漢字読めるの、俺しかいないわけね。
あのジョンの残念さとか痛々しさがわかるのって俺しかいないのね。
ジェイさん……あなた頭いいのに、今俺から見たらすごく間抜けな残念な感じに見えるよ。
絶対そんな真剣に悩むようなもんじゃないから! あれ!
「ここで勝負するには少し狭いな。外に出るか」
「お、おう」
くいっと外を示すようにジョンがあごをしゃくると、完全に圧倒されているグロウは緩慢な動きで頷いて、扉を開いた。
「グロウ」
外に出ようとするグロウの肩をジェイさんが引く。
それが右肩だったからグロウは小さく声を上げて顔をしかめた。
「覚えておけよ。右は怪我してるんだ。使うな」
「でも……!」
「あの体型を見ろ。あのタイプに素早さはない。そのお前の動物並みの反射神経があったら全部の攻撃はかわせるはずだ。隙を見て懐に入り込んで左か足で決めろ」
ジェイさんの言葉に、グロウは表情を緩ませた。
ニカっと笑い、おう、と返事をする。
それからグロウは俺の方を見せ、親指を立てて見せた。
ばっちりだから、大丈夫だ、とでも言いたいのか。
俺はそれを見て力なく笑った。
もう、何でも勝手にしてよね。
シリアスでいる方がばかばかしいよ、この状況。
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