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「おい、アレク」
ジェイさんも心配げに俺の肩を引いてくるので、俺は振り返るとにっこりと笑った。
「大丈夫。俺が護ってあげるから」
そう言って前に向き直ると、軽くその場でぴょんぴょん跳んでみて身体の動きを確認し、俺は姿勢を正した。
そうして一つ礼をする。
「それじゃ、よろしくお願いします」
日本語で言うと、ファイティングポーズを取った。
「さ、誰から来る?」
ちょいちょい、と指先で手招く仕草をして挑発すると、すぐに居並ぶ面々はいきり立って。
俺たちめがけて襲いかかってきた。
□ ■ □ ■
「……アレク、お前」
それから数分後、呆然と大部屋の中を見回してジェイさんが呟いた。
「すごく強かったんだな」
「そうでもないよ。それより、怪我はない?」
言いながら、肩をぐりぐりと回し一つ息をつく。
それに、ジェイさんは顔を覆って肩を落とした。
「怪我はないけど、自分より小さい子にまるでお姫様のように護られた俺のプライドはズタズタだ」
「そう?」
「しかもあやうく惚れそうだった」
その、ぼそりと呟かれた一言に、俺はズサッと思い切りジェイさんから距離を取った。
「えっ!? もしやジェイさんってそっち系!?」
「バカ、冗談だ」
そう言うと、ジェイさんは逆の肩を回す俺の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
「ありがとな」
そんな言葉と共にまなじりを緩め、ふっと笑う。
うわっ……
また、でた。
その笑顔は反則ですよ、ジェイさん。
仕方ないなあ、的な感じで、いつも厳しい目元緩めるなんて、女の子ならいちころですよ。
俺は男の子だから惚れないけどね!
惚れない--けど、なんかを持ってかれた感じはする。
……うん。考えないようにしよう。
「まあ強いって言っても、ずっと長いこと空手やってたってだけだから」
「でも、これは……」
ジェイさんは再び視線を巡らせて絶句する。
十人ちょいが集まるには少し手狭な場所には、まるで屍のように全員が伸びて転がっていた。
ちなみにそれは俺一人の仕業であってジェイさんは全く手を出していない。
まさに襲い来る相手をちぎっては投げちぎっては投げした結果だ。
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