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けれどさすがにグロウだった。動物的反射神経といわれるだけはある。
直感のみでそれをかわすと、逆にそうして生まれた隙に、思い切り左拳をねじ込んだ。
ジョンが低く呻いて、今度はジョンの方がよろける。
「てめえ……」
「ーーああ、もう性にあわねえっ」
睨み上げるジョンに、何故かグロウが耐えれない、と言うような声を上げた。
「よけながらとか考えながらとか無理! 来いデザートマン! 真っ向勝負だ!」
「デザート言うな!」
完全に血が上ったジョンが拳を振り上げてかけ出す。
--なんかもうそこからは、喧嘩とか戦いとか言うレベルじゃなかった。
ただひたすら殴り合い。
殴って殴り返して、蹴って蹴り返して。
かわすとか隙を突くとかそんなテクニックは全くなしで、ただガチで身体と身体でぶつかり合ってる。
そうしてどのくらい経った頃だろう。
どっちもぼろぼろなのに、何故か二人とも顔が笑ってきていた。
「何これ……」
そんな様子を眺めて俺がぽつりと呟く。
その横ではあまりの様子に頭が痛くなったのかジェイさんが額を押さえていた。
「もしかしてこれ……拳でわかり合うってやつ?」
「……みたいだな」「どこをどうやったらそうなるわけ?」
「俺に聞くな……筋肉で生きている奴らの思考は俺にはわからん」
「いやいやいや。でもちょっ……えええええ~実は体育会系の俺でも理解できない」
「アレクは筋肉思考じゃないからだろ……て、あ! あの馬鹿、あれだけ言ったのに右腕使ってやがる」
「……フェイに殺されるぞ~。局部麻酔は泣くほど痛いのに、あえて痛く打ってきそうだもん」
「もういい。こうなったらむしろ痛みで悶絶させるくらいじゃないと、あの馬鹿はわからないだろうから、やるだけやってもらおう」
そんなあきれかえった会話をする俺達の前で、とうとう勝負が決した。
グロウが繰り出した蹴りがジョンのみぞおちをとらえ、音を上げたジョンがとうとう、どう、と地面に倒れ込んだんだ。
「うおっしゃーーーー! 勝利っ」
それに、グロウが勝利の雄叫びを上げ、ガッツポーズをする。
けれどそれで気が抜けたのだろう。
グロウも足下がふらついて、すぐ隣に仰向けに転がった。
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