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「……やるな、お前」
転がってきたグロウに、肩で息をしながらジョンが言う。
すると、同じく肩で息をするグロウがスラムの狭い空を見上げながら笑った。
「お前こそな。ぎりぎりだったぜ。じいさんとの特訓がなかったやられてた」
「じいさん?」
「俺らのいた孤児院の院長がな、めちゃ強いじいさんだったんだ。とっくみあいしても勝てなくてさ。つか俺そのじいさんの服すらつかめたことなかったぜ」
「そりゃ、驚きだな」
「だろ? 超元気じいさんだったんだぜ……もう、帰れないけどよ」
「なんだ、家出か」
「いや、そう言うんじゃないけど……まあ置いとけ」
「ああ。置いておく。とりあえず、俺の負けだ。アレクは連れて行っていい」
そう告げたジョンの声は少し寂しげだった。
するとそれに慌てたようにグロウが身体を起こす。
「おい、何言ってんだ!」
そしてジョンの顔を覗き込むと拳をかざしてみせる。
「俺らも今日からダチだろ! 仲良くしようぜ!」
そう言って、今度は開いた手をジョンの方に差し出した。
それを、ジョンは迷わず取る。
まるで腕相撲でもするかのごとくがっちりと、手を握り合うと、二人は『熱い』眼差しで見つめ合った。
あ、生ぬるいな。
『暑苦しい』眼差しで見つめ合った。
「……なんて言うかさ。何この腐れ青春図。心底どうでもいいんだけど」
「同感だ」
「とりあえず、フェイ呼んでこようか。怪我人続出だし」
「そうしてくれ……おい、グロウ!」
「なんだ、心の友その1!」
「……驚きのウザさだな。右腕の調子はどうなんだ?」
「右腕?」
「あれだけ言ったのに散々酷使してただろ」
「て、うおっ! いってええええええ」
と、今になってグロウが叫ぶので。
「「おっそ」」
俺とジェイさんは見事にハモってツッコミを入れた。
は~っ
馬鹿には心底つきあいきれないね。
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