2)災害が忘れた頃にやってきた

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「おい、闇医者。アレクをいじめるな」  するとそんな俺を覆うように大きな影が差して気づいたら後ろにジョンが立っていた。 「……なんだね。筋肉が口を出さないでもらいたいね」 「ぐちぐち言ってる暇があったらあっちにいる怪我人を診てやってくれ」  ジョンが言うと、フェイは渋々とアジトの奥にいる怪我人を診に歩いて行った。 「アレク」  後にぽつんと取り残された俺を、ジョンが呼ぶ。  俺が少しおそるおそる振り返ると、ジョンは気まずそうに頭をかいてから軽く頭を下げた。 「すまない。全部誤解だったみたいだな」  メンバーをのしたことを怒られると思っていた俺は、逆に謝られて戸惑う。  身体を起こしたジョンは、そんな俺を見下ろして苦笑しながら続けた。 「お前が違うって言うように、確かにあの二人はどう見てもマフィアの人間には見えないな。噂は誤解だったらしい」 「うん……」 「それどころか、真っ当に育ってきたような雰囲気がある。スラムなんて足を踏み入れたことないような」 「……そうだね」  頷きながら俺は、遠くの角を曲がっていく二人の後ろ姿を眺めた。    足にきていたらしいグロウががくん、と膝を折ったので、大仰にため息をついたジェイさんが、結局肩を貸してやって歩き始める。  そうして二人の姿が見えなくなると、ジョンが声を殺して「だが」と呟いた。 「それはグロウの方だけな気もする。もう一人の方の放ってる気配、尋常じゃないぞ。あれじゃ、マフィアと間違えられても仕方がない」 「でもつい最近まで、それこそフェイのところに来るまでは普通にハイスクールに通ってるみたいだったよ。ジェイさんも」  言いながら、自分でも語尾が沈むのを感じた。  あの日コーヒーを飲みながら、聞かないという態度はとったものの、気になっていた。  何故ジェイさんは拳銃を持っているんだろう。  それに、グロウの傷だってあれは銃で撃たれた怪我だ。フェイの説明からしたら、多分そう。  あの二人があまりに普通過ぎるくらい普通なほど、その違和感だけが異様に際立ってくる。  それを、聞けるほどの仲ではもちろんなかったし、あちらも意図的に触れさせないようにしている節はあった。  だから、踏み込まずにいたんだけどーー
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