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グロウとジェイさんがデザート・ウルフのアジトに乗り込んできた日から、二週間が経った。
例の喧嘩で悪化したグロウの傷は、そのおかげで案の定治りに響いていた。
喧嘩から数日は傷が熱を持ってベッドに縛り付けられていたし、その後もしばらくは右手が不自由な時期が続いていた。
そしてそれが、すこぶるフェイの機嫌を悪くしていた。
なぜならグロウは自称静寂を愛する男というフェイにはうるさすぎる患者だったし、さらにはそのグロウを訪ねて毎日のように押しかけてくる迷惑な一団がいたからだ。
その一団とは、ジョン率いるデザート・ウルフのメンバー。
彼らがお見舞いに――いや、お見舞いと称して遊びに来るのだ。
俺には本当に信じられない話だけど、どうも二人はあの喧嘩で本当にわかり合ってしまったらしいんだよね。
まるで旧知の仲のように、天気の話だろうがスポーツの話だろうが、それこそいかがわしい雑誌の中身の話だろうがとても楽しそうに話をして、笑い合っていた。
メンバーも、ジョンが友達と認めた相手だったし、何よりジョンと喧嘩で勝ったという実績もあって『グロウさんグロウさん』なんて言いながら周りを囲んでしまって、すっかりチームの一員、といった感じだった。
一方で俺は、というと。
そんな闖入者が来るものだから相変わらず読書の時間を邪魔されて、大変な被害を被っていた。
家のどんな隅っこに隠れていたって、動物並みの勘を兼ね備えたグロウや、そこまで行かなくてもジョンが探しに来て俺をみんなのいるリビングにひっぱっていくんだ。
冗談じゃない、と思っていた。
でもその反面、少し感謝しているところはあった。
あの日向けられた視線や態度は俺の中で少しわだかまっていたけど、彼らがそうやって引っ張っていってくれて馬鹿話の中に俺を巻き込んでくれたおかげで、自然とメンバーとの距離感もなくなっていったからだ。
と言っても、わだかまっていたのは俺の方だけらしくて。メンバーの方は拍子抜けするくらい元の態度に戻っていたんだけどね。
たぶんジョンが何か言ってくれたんだと思う。
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