3)弱きを助け強きをくじけ!

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「お前の見てて、そういう髪色も面白いかな、と思って昨日染めてみたんだ」  俺が玄関の鍵を開けると、ジョンはそう告げながら家の中に入ってくる。  ジョンは俺の様子には気づいていないようで、どしどしと歩いてグロウの方へ歩いて行くと、かがんで髪の色を見せてみせた。  もともと派手な色の髪のグロウもそんなに違和感を感じないのか、見慣れた姿との不一致を面白そうに観察している。  そりゃね、真っ黒の髪の人ばかりの日本で色を変えるのに比べたら、俺も大分抵抗感はない方なんだろうけどさ。  それでも栗色と赤の間にはものすごい開きがあるわけで、俺は目をまん丸にしてそんなジョンの姿を凝視していたよ。  それこそ、グロウと出会った時のようにね。 「なんだアレク。ボスの髪にまだ驚いてんのか?」  するとそんな俺を、ジョンの後からきたメンバーが腕を回してきてからかってくる。 「ジョンさん、アレクが度肝抜かれてるぜ。強面なのにそんな色にすっから」 「え~?」  ジョンが不思議そうに振り返ってくる。  俺は変わらず頭を凝視したままだったけど、不意に顔が現れたので、あ、目の色はそのまんまなのね、とどうでもいいことを考えてしまった。  ちなみにジョンの目の色は鳶色ね。 「驚いたか?」 「……そりゃ驚くよ。その色は。赤だもん赤。車だって赤は大分目を惹くじゃん」 「でもグロウもこの色だぞ」 「そうだけど、グロウはキャラも派手だし、色が変わろうが何だろうがうるさいのには変わりはないからさ」 「て、おい、アレク。俺に対して大分失礼だぞ」  聞きとがめたグロウが顔をしかめて言うけれど、事実だったので華麗にスルーすると、俺は続けた。 「まあ、見慣れたら普通になるのかもね」 「じゃあ、早く見慣れてくれ」 「……頑張るよ」  と、ジョンの髪に関する会話は、この時はこれで終了した。  でも、大変だったのはこの後だったんだよ。
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