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同時に、ジェイさんの孤高主義もどんどんひどくなっていっているようだった。
じっと考え込んでいる時間がどんどん増えていた。
――なんとか、少しでも会話できないかな。
距離を取られ始めたためになかなか会話も難しくなっていた俺が、半ば焦りと共にそんな風に思いながら過ごしていたある夜のことだった。
ジェイさんと話すチャンスを得たのは。
その日は、フェイがたまたまどこかに泊まりがけで出かけるというので、ずいぶん遅くまでデザート・ウルフの面々が大騒ぎをしてくれた日だった。
そして俺はその時、一人リビングで後片付けをしていた。
少し話はそれるけど、フェイのところにいるのは母親は知っているけど父親には内緒状態の俺は、実は結構、デザート・ウルフのメンバーが毎日押しかけてくる毎日にはひやひやしていたりしたんだ。
だってもしも嫌気がさした一本フェイが家に電話でもしようものなら連れ戻されるのが確実だったからね。
ジョン達はグロウに会うのが目的できているのだから関係ない――と開き直るのは簡単だよ。
だけど二人を引き合わせたきっかけは俺なわけだし、なにより俺自身騒ぎに引っ張り込まれてもいる以上完全にグロウだけが目的、とも言えないじゃない?
だからなるべくフェイの機嫌は損ねないように、と神経を砕いていたわけ。
それもあって騒いだ後片付けくらいは完璧にやっておかねばと、せっせと片付けにいそしんでいたんだけど、そんな時だったんだ。大分前に寝泊まりしている倉庫部屋に引っ込んだはずのジェイさんが不意に出てきてリビングを通りかかったのは。
たぶん水を飲みに来たんだろうと思う。やけに暑い夜だったし。
でも彼はキッチンに向かおうとした足を不意に止め、俺に声をかけたてきた。
「……一人で片付けてるのか」
疑問ではなく確認の言葉だったけど俺は一つ頷いた。
それから拾った缶をゴミ袋に入れながらため息をつく。
「この惨状をフェイが見たら、本気で追い出されるからね。帰ってくる前に片しちゃわないと」
「グロウは?」
「寝かしつけた。あいついても散らかるだけだもん」
俺がそう答えると、ジェイさんはいびきの聞こえる病室の方を振り返った。
「……まあ、確かにそうだな」
呟いてため息をつくと、彼はキッチンで当初の目的通り水を一杯飲み干したあと、俺の隣にやってきた。
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