プロローグ:本当に友達なんだろうかとか思ったり

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     □ ■ □ ■  うちは日系ってのもあって、とにかく他の家と違う風土だった。  どの辺が違うかって言うともの凄くわかりやすくて、『金があるなら使え、ないならクレジットで借金してでもものを買え』――という考え方が普通のアメリカにおいて、気違いかってくらい質素倹約質実剛健に努める家庭だった。  大きい車がかっこいい社会であえて小さい車を買ってガソリンをケチってたし、お金に余裕がある時はすぐ貯金をしていた。 『あのなあ、その大盤振る舞いで日本はバブル崩壊後の不況で大変なことになってるんだぞ。俺達も備えておかなきゃならないだろう』  石橋を叩いて叩いて、あげく渡らないタイプの親父は、そう言ってせこせこと貯金を続けていた。  それがまあ二年前のリーマンショックで、まさかの大不況がやってきて、神話すらあったアメリカ市場が大転落するわけだけれども、それはそれ。  当時の俺としてはそういうせこせこした親父やお袋の感覚がすごくイヤだった。  ついでに言うとそんな性格のわりに父は空手がやたら強く、怪我で世界選手権は断念したものの世界制覇の夢を子供に託すとか言う、時代遅れな熱血漢でもあった。  だから、大きくなるまで毎朝稽古があったりもして、正直に言ってそれも俺的にイヤだった。  そんな理由から、とうとう家を逃げ出したのが十三の時。  最初は軽い家出のつもりだったんだけど、最初の一回で行ったちょっと悪い感じの人のたまり場で、これがまたいたく気に入られちゃって、ちょいちょい夜通し遊ぶようになってしまった。  ジュニア・ハイスクール(中学校)入ってすぐにそれをやったんだから、なかなかイカすでしょ?  そんな風にして、このまま一気に転落人生か? と言う時だったんだよね。  ――グロウ出逢ったのはさ。  おかげで、最近じゃ週に二回は家に帰るし、スラムにいても結構まともな生活してると思う。  ある意味まあ、グロウが恩人になるんだけど――認めたくないのは何でかな。  軽いからかな。  これはその、俺がグロウ本人にも話していない七年前の事件に関する俺なりの顛末の物語だったりする。  だからくれぐれも、グロウには言わないでよね?
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