3)弱きを助け強きをくじけ!

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「確かに実力で成功していった人は、それに見合った金銭を手にしてもおかしくはない。だが実力を試す権利すらない状況はあまりにも公平じゃない――おそらくアレクとこのチームのメンバーとの一番大きな差はそこなんだよ」  俺は、すごく衝撃的な気分だった。  確かにその通りだ。    恵まれていること。それはつい金銭面に目をやりがちだ。  だけど一番犠牲になっているのは生活の水準じゃない。    権利だ。  学ぶこと、能力をの伸ばすこと、それをするために身体を作ること――それにはすべてお金がかかる。  俺の空手の能力だって、よくよく考えればかなりの額がかけられてる。それを負担してくれてる親がいたからできるんだ。 「この国じゃ高校を中退して働かなきゃならない子供はものすごく多い。そういう子供の子供もまた似たような環境にさらされることになるだろう。そうしたら生まれた家が違ったという、それだけのことで、生まれながらに底辺に這いつくばって生きることを強要されるんだ」 「……そう、だね」 「デザート・ウルフのメンバーはほとんどがそうして底辺に来ざる得なかったような子供達だろ? それを、なんとかできないのか、と思ったんだ」  そう告げたっきり、ジェイさんは押し黙りまた、思案の姿勢に入る。  俺はその姿を驚きと共に眺めていた。  一人でずっと、そんなことを考えていたのか。  まるでデザート・ウルフのメンバーに興味なんてなさそうなふりをして、距離すら置くふりをして、彼らのことを。  ――もちろんそれだけじゃなかったんだと思う。  この会話からずっと後の話にはなるんだけど、すべての事情を聞いた時にそうは感じたから。  だけど全く彼らへの思いがなかったかというとそれも違う。  彼ら――いや、この国で不平等に虐げられている人達のために戦うこと。  ジェイさんの戦いはこの時点から始まっていたのかもしれない。
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