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「不平等を公平に……」
ふと呟いた俺は何かが琴線に引っかかった気がして、唇をなめた。
日本でもこう、そういうのを何とかしようとした人とかっていなかったっけ?
「ん~……」
腕を組んで唸った俺は、おお、と声を上げた。
「石川五右衛門!」
「イシカワゴーモン?」
俺の発した耳慣れない言葉に、ジェイさんが不思議そうに反芻する。
でも惜しい、ちょっと違う。
そして石川さんやばいことになってしまってる。
可哀想だからやめてあげて!
「いやいやいや、グロウみたいな言い間違えしないで。五右衛門だよ、五右衛門。日本の義賊なんだ」
「義賊?」
「悪い人とかお偉いさんから盗んだお金を、当時貧困にあえいでいた市民にばらまいたの――て、あ、ちょっといい考えじゃない?」
言って俺は身を乗り出した。
「権利をどうするとかさ、俺らにはできないよ。でも、不正にたくさん持ってる人から貰って、困っている人にあげるくらいならさ、うまくやったら俺らでもできない?」
「盗みをするってことか?」
ジェイさんが不快げに眉根を潜める。
だけど俺は、でも、と言って反論した。
「今までだってそうして生計たててきたんだよ、あのチームは。しかもこれまでは無差別に、それこそ普通に真っ当に生きてる人からだって奪ってた。でもそれを不正してる人に絞ってくなら、まだましだろ」
「ましって……だが、その方がリスクは高いぞ」
「――リスクなんて考えてたらなにもできないぜ。それよりやる価値があるかないか、だろ」
突然俺達以外の声が割り込んできて、俺達は驚いて振り返った。
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