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「グロウ!」
俺が声を上げると、グロウは歯を見せて笑った。
「やっぱり起きていたか」
対してジェイさんは少し予測していたように、息をつく。
「なんで気づいてたんだ?」
ソファの長い方、ジェイさんの隣に腰掛けながらグロウが問う。
ジェイさんは呆れたように「わからないでか」と言って答える。
「ある時点からいびきが止まったからな。というか、いびきもわざとくさかったし」
「いや、俺も寝てたんだぜ? だけどお前らうるせえんだもん。目ぇ覚めちゃって」
「うるさいってほどの音量じゃない。お前の耳が異常に良すぎるんだ」
「んなことねえよ。普通だよ」
「お前が普通なんだったら世の中の人間みんな不眠症だな。少しフェイの耳栓分けて貰え」
「やだよ。あれ耳痛くなんじゃん」
そんな会話から、またぎゃあぎゃあとした言葉の投げ合いになる。
二人のやりとりを眺めながら俺は、それがあまりのもこれまで通りだったので、少しほっと胸をなで下ろした。
「――だから、やるかやらないか、の話だろ!? なんで俺の耳を取るとか取らないとかの話になるんだ!」
口では完全に負けるグロウが追い込まれて、破れかぶれのように叫ぶ。 ジェイさんが意外そうに目を見開いて「覚えていたのか」なんて呟くからグロウは苦く顔をしかめた。
けれどすぐに俺の方を見て、ニッと笑う。
「俺は面白そうだから、アレクの話に乗るぜ」
「グロウ!」
ジェイさんが声を上げた。
対してグロウは朱色の眼差しに真摯な色をたたえてジェイさんに向ける。
「俺達とあいつらとなにが違うよ、ジェイ」
低い押し殺すような声に、ジェイさんの顔が凍った。
「いや、お前は両親を亡くしたところを引き取られたから少し違うかもしれないけどな。俺は親に、孤児院の軒先に捨てられたようなガキだ。あいつらと変わらないんだよ。捨てられた先が、孤児院だったからじいさんが育ててくれて、そのおかげで学校にも行けて不自由せずにすんだ――それだけだろ?」
グロウから出た言葉に、俺はかすかに息を呑んだ。
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