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「……お前、そんなこと考えてたのか」
呟いたグロウの手から力が抜けて、どう、と重たい音と共にジェイさんの身体がソファの背もたれに沈み込んだ。
グロウから殺気が消えたので後ろを振り返ると、背もたれに深く身体を預けたまま、ジェイさんは目元を覆って俯いていた。
「……アレク……」
そして喘ぐように俺の名を呼ぶ。
批難の声、ではなかった。
ただ張り詰めていたものが抜けた、そんなような声だった。
「あなたの考えを暴いたこと、俺は謝らないよ。だっておかしい。グロウとずっと友達だったのはあなたなんだ。俺もジョンもあなたの代わりになんてなれない。なれるわけがない」
俺は言葉を紡ぎながら、だんだんとこみ上げてきた怒りに拳を握った。
――こんな、人を馬鹿にした話なんて、ない。
グロウと距離を置こうとしたジェイさんは、俺に事情を明かすことで味方に引き込もうとした。
これだけなら、理解はできる。
だけど問題はその後だ。
彼はそれで事情を理解した俺と、新しくできた友達であるデザート・ウルフのメンバーをグロウの側に置いて、自分自身はグロウと縁を切ろうとしたんだ。
多分それはグロウを護ろうとしてなんだと思う。
さっきグロウの言った『襲撃』の理由が自分にあると考えて、だから、グロウを危険にさらさないために離れようと。
デザート・ウルフの組織の改革を考えたのだって多分その一端だ。
グロウを残していく場所の素地を整えようと思ったんだ。
でもそれは、俺達に対してあまりに失礼だ。
そして、すべての意思を無視したグロウに対しても、ひどすぎる仕打ちとしか思えない。
だから俺は、意地でも二人をつなぎ止めてやる!
「グロウ、あんたはどう思う?」
俺が見上げると、グロウはかすかに目を見開いて、ジェイさんから俺に視線を戻した。
「ジェイさんはその孤児院の襲撃ってやつの責任は全部自分にあるって考えてる。そんな理由があるからって縁を切られるってこと、グロウは納得でき――」
「納得できるか!」
俺が言い終えるよりも前に、耐えきれなくなったようにグロウは叫んだ。
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