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「ギブ! ギブアップだ! もうやめてくれ!」
ジェイさんがぱしぱしと腕を叩いてそう言うと、ようやくグロウは腕の力を緩めた。
はらりと腕を解いたグロウを、ジェイさんが恨みがましい目で見上げる。
だけどグロウは、今度は力尽きたようにジェイさん肩に腕を回すと、彼の肩に顔を埋める。
「……頼むから」
そうして、喘ぐような声で、言う。
「お前までいなくなるとか、言わないでくれ」
かすれた声のグロウの囁きに、ジェイさんは驚いた顔をして傍らの友人を見た。
端正な顔を歪めると、ふるわせる友人の肩をぽんぽんと叩く。
「……――悪い」
そうして彼の返した言葉は、短いけれどまるで絞り出したような声で。
俺はその、二人のやりとりに、彼らが失ったものの大きさを痛いほど感じていた。
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