3)弱きを助け強きをくじけ!

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「最初はどうなるかと思ったけど、なんとかなるもんだな」 「そうだね。あとは当日、グロウ達突入部隊が失敗しなければミッションコンプリートだ」 「するわけないだろ。俺を誰だと思ってる」 「「筋肉馬鹿」」  俺とジェイさんが見事にハモると、グロウはむうと頬を膨らませた。  意外に子供みたいな仕草をするグロウに、俺は思わず吹き出してしまった。 「しかし、ゴッド・フィアーか。あくどそうな顔してるねえ」  俺は抱えていた資料の一番上に、クリップで留めてあった写真に目を落として呟いた。  そこには上等そうなスーツに身を包んだオールバックの男が映っていた。  ベロア生地のソファに腰掛けて、少しかっこつけるように肘をついて映っているだけあって、容貌はまあ、そこそこ、と言ったところ。  だけど人間、二十歳過ぎたら顔に出るって言うからね。  悪くはない顔はすっかりあくどそうに歪んでしまっていて、写真からでも彼の腹黒さは伝わってきそうですらあった。 「偽の絵画を売りさばいて稼いでるんでしょ?」 「と、詐欺だな」  俺の呟きにジェイさんが付け加える。 「しかも詐欺働いて貯めた金で詐欺働いてるビバリーヒルズに家建てるって言うんだから相当の面の皮の厚さだぜ」 「やだねえ」 「ま、偽の絵画も稼いだ金も含めて全部いただいちまえば、しばらくは身動きとれないだろ」  グロウが言って、拳を自分の手のひらに叩きつけた。  いただいちまうって、なんかこう、ワルっぽいのが板についてきたなあ、グロウ。 「……でも、いいのか?」  ジェイさんはそんなグロウは無視して俺の方に問いかけてくる。 「俺とグロウは事情がある。でもアレクは単に家出しただけだ。今ならまだ引き返せるんだぞ」  ジェイさんの言葉に、俺は思わず足を止めた。 「なにそれ」 「わざわざ犯罪者になる必要はない。そう言ってるんだ」 「だからそれ、どういう意味?」  俺はきつくジェイさんを見上げて言った。 「たとえそれが詐欺で稼いだ金だろうと、人から盗むのは犯罪だよ。わかってる。わかってて俺は今まで、手伝ってきてたんだよ」 「……アレク」 「それなのに、今こんな瀬戸際になってそんなこと言わないで」  言って俺は視線を落とすと、「それに」と続けた。
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