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「石川五右衛門って言ったの俺だろ。石川五右衛門が最後は処刑されたってことも知ってて言ったんだよ、俺は」
俺の言葉に、「処刑!?」とおののいたのは何故かグロウだった。
もしかしてグロウ、面白そうだけで話にのって、覚悟できてなかったのか?
おいおいおい、この男は……。
「だけど、それがわかっててもジェイさんが言った不平等が嫌だって思ったんだ。こんな方法が根本的解決になるとも思ってないし、もっと変えなきゃならないことはたくさんあるだろうけどさ、それでも今はこの作戦に参加するんだ、俺は」
断固とした意志で言って俺が再び視線を上げると、ジェイさんはほんの少しだけ悲しそうな顔をした。
でも大きな手を伸ばすと、くしゃり、と俺の頭を撫でてくる。
「……悪かった。もう言わないよ」
まるで子供扱いの対応だったけど俺は俯いてそれを受け入れた。
自分でも、どれだけ子供かって言うのはわかってたつもりだったから。
もしかしたら将来、この時の選択を後悔する時が来るのかもしれない。
やっぱり真っ当な道だけを歩いて行けば良かったとか思う日がくるのかもしれない。
そんな未来が――今の俺には見えない、でもジェイさんには見えてる可能性を、多分ジェイさんは心配してる。
だけどやっぱり俺は子供だったから。
子供なりのまっすぐさで選ぶしかなかったんだ。
たとえ犯罪者になったとしても正しいと思うことを選ぶ道を。
正義が正しいなんて思うほど子供じゃないし。
要領よく生きるために自分の考えをねじ伏せて曲げられるほど大人でもなく。
そんな十四だった当時の俺の、それがおそらく選択の夜だった。
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