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ゴッド・フィアーの屋敷はビバリーヒルズでは少し立地条件は悪いところに立っていた。
大通りから奥まっていて人通りが少なくて、しかも街の端に近い、という、そんな場所だ。
静かは静かでいいんだけど、少し不便。
そんなところをあえて選んだのは彼が後ろ暗い商売をしていて、それを周囲に気取られないためだと思う。
でもそれは逆に俺達からしてみたら好都合だった。
人通りが少ないいうことは進入時に人に見つかりにくいということだし、端に近いということは逃げやすいということだ。
俺達がゴッド・フィアーをターゲットに選んだのは、彼の住居がそんな、忍び込みやすい場所にあったから、というのも実は理由として大きい。
何せ怪盗としては初心者の集まりな訳だから。
午前零時十分前――それぞれ所定の場所への人員配置は終わっていた。
後はジョンから来る号令を待つだけだ。
ジョンも屋敷にかかったセキュリティが切れれば、メンバーに号令がかけられる――状態だったんだけど、なにせそのセキュリティを切るのに時間がかかっていた。
【まだセキュリティは切れないのか】
現場で待機したグロウから苛立ちの混ざった声が聞こえてくる。
軍隊風にいうと二三三○には突入の号令がかかって中に侵入しているはずだったのがすでに二十分も遅れているんだから、苛立つのも当然だろう。
それに、遅れれば遅れるほど家主のゴッド・フィアーが戻ってくる可能性が大きかった。
今彼はパーティに招かれ、留守にしていて、ちょうど二十三時を少し過ぎたくらいにハウスキーパーも引き上げる。
その隙間を狙っての作戦だったのだ。
どのくらい彼がパーティに参加してくるかによるけども、帰ってきた彼と鉢合わせ、なんてことになったら目も当てられない。
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