3)弱きを助け強きをくじけ!

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「どうだ? ジェイ、アレク」  ジョンが問いかけてくる。  相変わらず真っ赤な髪の色はど派手で、今日は格別気合いを入れたのかライオンのようにつんつんと立った立派なたてがみになっていた。  でもその百獣の王(少し肥満気味)も流石に不安そうだった。 「あと、少し……っ」  答えるジェイさん含め俺達バックアップ班は、ゴッド・フィアーの屋敷から少し離れた場所にあった空き倉庫にいた。  そこを改造し、モニタやら発電機やらを引き込んで作った仮設の基地から、セキュリティを攻略したり伝令を行うのがバックアップ班の仕事だ。  とはいえこの時点では、伝令係もリーダーのジョンも手持ちぶさたで、仕事をしているのはセキュリティ攻略に取りかかっていたジェイさんだけだった。  ジェイさんはあぐらをかいた膝の上に抱え込んだ、廃材で作ったノートPCとは思えないスペックを兼ね備えたモバイルで、ものすごい勢いでセキュリティをハッキングしていっていた。  はっきり言って流れていく画面の文字とキーボードを打つ手の動きが、見えなくらいだ。  対して俺の仕事はというと、その隣にあるもう一台のモニタで、セキュリティの状況を確認をすること。    ジェイさんがすべてのセキュリティをクリアしてくれれば、各ゲートのロックが外れ、表示された見取り図で赤く記されているところが全部緑になるはずなんだ。 「……よし! 抜けた!」  ジェイさんが声を上げる。    同時にジェイさんの抱えていたPCから小さくピーという音がして、俺の眺めていたモニタの赤い表示がぱらぱらぱらっと緑に変わっていく。 「きた! ジョン! ロックが外れた!」 「保つのは三十分だ。メインセキュリティが三十分作動しないとバックアップ用のサブコンピューターが作動して、金庫と玄関、外壁のセキュリティのロックをかけるようになってる」 「わかった」  言って、ジョンは立ち上がった。 「みんな、聞こえるか! セキュリティが外れた。制限時間は三十分」 「二十八分三十六秒だ!」  ジェイさんが声を上げ、訂正する。  確かに一分三十秒でも大きな差だ。 「制限時間は二十八分! 作戦にかかれ!」 【おう!】  ジョンからの号令に、複数の鬨の声が上がる。
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