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「あいつら……隠密行動だってわかってんのか?」
その、マイク越しの声にジェイさんが苦い声で呟く。
一番大きな声が明らかにグロウだったからだ。
俺は苦笑しながらジェイさんにタオルと水の入ったペットボトルを差し出した。
「お疲れ様」
十月に入ったとはいえ、ロサンゼルスはまだ暑い。からっとしている分体感温度はそうでもないんだろうけど、何せ膝の上にノートPCを抱え込みながら作業していたのだ、ジェイさんは。
タオルを差し出されて初めて彼自身気づいたみたいだったけど、汗だくだった。
「悪い」
言って受け取ったジェイさんは、タオルをPCの上に置いてまず、ペットボトルに口をつけた。
そうしたら急に乾きが襲ってきたらしくて、一気にそれを飲み干してしまった。
「もう一本いる?」
「ああ。一応置いておいてくれ」
「了解」
俺は言われたとおりペットボトルをもう一本取り出して汗を拭くジェイさんの傍らに置くと、モニタの前に戻った。
セキュリティがきちんと切れたままかどうか、確認しておくのが俺の仕事なんだ。
――けどね。
「少し落ち着いたら? ジョン」
その後ろをうろうろとジョンが歩き回るもんだから、集中できなくて、俺は思わず振り返って言った。
「リーダーなんだからどっしり構えて待ってなよ」
「けどな、アレク……ああ、せめて俺も現場に行けてれば!」
「やめてよね。それをやりたいならあと五十キロはやせて貰わないと無理だよ」
俺が言うと、ジョンが傷ついたような顔をして胸を押さえた。
二本目のペットボトルに口をつけていたジェイさんも思わず吹き出したのか、タオルで口元を覆いながら咳き込んでいる。
「……お前、相変わらずズバズバ言うな」
「今更俺の性格言及してる場合じゃないでしょ。頼むから俺の任務を遂行させてくれないかな」
俺の言葉に、ジョンは目を見開いて、それからジェイを見た。
二人で顔を見合わせ肩をすくめる。
おおかた、けんもほろろな俺の態度に、どうしたんだ、とでも思ってるんだろう。
でもね、正直なことを言って、俺は俺でかなり不服なわけ、このポジション。
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