3)弱きを助け強きをくじけ!

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「どうした?」  すぐにジェイさんがやってきて、俺の肩越しにモニタを覗き込んでくる。 「なんか、変なのが出てきたんだ」  しかもその丸い光は明滅しながら移動していた。 「金庫の方に移動してる」  俺が言うと、ジェイさんはハッキングに使っていたノートPCに駆け戻り、モニタを覗き込む。  それから舌打ちをした。 「油断した。セキュリティロボだけが別プログラムで作動してる」 「どういうこと!?」 「俺のミスだ。メインセキュリティが切れてからサブシステムが作動するまでは三十分だけど、その前にセキュリティロボはそのサブシステムで作動開始するプログラムらしい――このエリアにいるのは誰だ?」  言いながら、ジェイさんがヘッドセットをかぶる。  俺は手元にあったファイルを開いて、配置表を確認した。 「グロウの班だよ! グロウの回線は三十二番!」 「あの馬鹿か……グロウ! 聞こえるか!」  ジェイさんの呼びかけに、グロウはすぐに答えてくる気配はない。 「グロウ!」    それに焦れたジェイさんが叫ぶと、さらに大きな音量で、それこそヘッドセットをつけてない俺にも聞こえるような叫び声が返ってきた。   【うるせえ! 聞こえてる!】 「無事か」  ほっとしたようにジェイさんは言うけど、グロウからは【無事じゃねえよ】と苦い声が返ってくる。 【なんか変なロボットが出てきたぞ。なんか宇宙ものの映画で見たことある感じのデザインだ。バケツの上にぶった切った球体が乗っかってる感じの……】 「デザインの描写をしてる場合か。装備は?」 【両手にマシンガン二つ】  返ってきた答えに、ジェイさんが再び舌打ちする。  それから、ジョンを振り返った。 「今からそのロボのセキュリティをハックする余裕はない。多分作業は途中だと思うが引き上げさせてもいいか?」  突然の事態に呆然としていたジョンは、そのジェイさんの言葉に正気に戻ったらしく、慌てて何度も頷く。 「じゃあジョンは他のメンバーにも引き上げを伝えてくれ――グロウ! 引き上げだ」  ジェイさんの指示に、また返ってきたのは沈黙。 「グロウ!」  沈黙が続く。
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