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「グ……」
【だから、うるせっての! 無理無理! フレッドがみつかっちった】
「なんだって?」
【だから今からちょいとぶっ倒してくる。だからできるだけの弱点を教えてくれ。機械の型番は……え? SL? 汽車? あ、違う?】
どうも型番をチェックしているのは別の仲間らしい。
少しそんなやりとりが入った後、グロウはLSK0とロボットの名前を告げた。
「わかった。少し待ってろ」
言ってヘッドセットを外し、肩にかけると、ジェイさんは再びノートPCに向き直った。
入手した機体名からものを割り出す。
「バケツ……なるほど」
ジェイさんが呟くので、あたふたと部屋の中を歩き回っていたジョンがその画面を覗き込んだ。
「……弱点はあるのか?」
「装備は上等だけど、ボディのデザインがひどいな。これじゃ、簡単に転がる」
俺はモニタにかかりきりだったから見えなかったんだけど、後で聞いた話によると円柱型のボディに対して、キャタピラが異様に小さかったらしい。
それを差してジェイさんは『簡単に転がる』と表したのだ。
「それにセンサーがそんなに多くない。少なくともこの胸のところにある一つを潰したら周囲は感知できなくなる……よし」
呟くと、ジェイさんは再びヘッドセットを装着した。
「グロウ! 聞こえるか!」
【ああ!】
耳元でがなられるのは勘弁してほしかったのか、今度はすぐにグロウが答えた。
「弱点は重心の高さとセンサーだ。転がすか胸にあるセンサーを壊せ」
【胸にあるセンサーって!?】
「プラスチックというかガラスみたいなのがはまってるところがあるだろ。そこから音波出して、周囲の地形を把握して進路の座標を決めてる。人間も多分それで判別してるはずだ」
【詳しい説明はいい! どうしたらいいんだ!?】
叫ぶグロウの背後ではタタタタタ……という細かい破砕音が連続して響いている。グロウ本人も息を弾ませているからおそらく移動しながら交信しているのだろう。
「とにかくそこを壊すか、何とかして転がせばそいつは身動きとれなくなる!」
そんなグロウにつられたようにジェイさんも叫んだ。
【わかった!】
それっきり通信が途絶える。
「大丈夫なのか?」
息を呑んでその短いやりとりを見守っていたジョンが声をかけるけど、ジェイさんはやけくそのように首を横に振った。
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