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「……あとは現場にいるあいつに任せるしかない。ここにいる俺達にできるのは、ここまでだ」
告げながら、無意識なのだろうけどジェイさんは手にしていたペットボトルをぐしゃり、と握りつぶした。
ふたが緩んでいたからかそのせいで中の水が噴き出して、あたりは水びたしになったんだけど、誰も彼を責めることはできなかった。
待つしかできない苦しさに耐えながら、まるで俺達の方が敵襲に怯えた避難民になったかのように息を殺して、グロウからの通信を待った。
□ ■ □ ■
――その頃グロウは、と言うと、ジェイさんのアドバイスに従って何とか敵を倒そうと躍起になっていた。
ほとんどのメンバーを先に逃がし、自分がしんがりになってその不格好なロボットを引きつけながら屋敷の中を走っていたのだ。
「これでもくらいやがれ! ゴールデンアタック!」
その割に余裕があるのか、盗み出すはずだった金塊の一つを胸のセンサーに向けて投げつける。
けれど当たるよりも前にLSK0の持つマシンガンが放った弾丸に金塊ははじかれ、絨毯の上に落ちてしまう。
「やっぱ、こっちも射撃で対抗しないと、だめかあ」
言いながら銃を取り出す。
けれどこの時点でグロウはまだ、射撃の訓練をきちんとしたことはなかった。
手配した武器が届いてから何回か射撃をしてみたけれど、一度も当たることはなかったのだ。
「どうすんの? それ」
すると傍らに、先に逃げたはずのフレッドが戻ってきて、グロウに問うた。
いつもは泳いでいる視線が珍しくまっすぐ見上げてくるので、グロウは少し気圧されながらジェイからの説明を伝えた。
「あの、胸のセンサーのところを撃ったらいいってことか?」
「そう。だけど俺、射撃苦手なんだよ」
「貸せ」
グロウが嘆くように言うと、フレッドはグロウの手から銃を奪い取った。
「おい、フレッド!」
「俺だってデザート・ウルフのメンバーなんだ! お前らみたいなぽっと出や、アレクみたいなガキにいいとこ取られてたまるか!」
そう言って、フレッドは駆け出していく。
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