3)弱きを助け強きをくじけ!

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「おい! フレッド!」  球が当たるか当たらないかのすれすれのところを移動して、置いてあった置物の影に隠れると、フレッドはそこからLSK0を撃った。  サイレンサーをつけていない銃から、激しい怒号が鳴り響く。 「当たった!」    放った銃の三発目がセンサー部分を破砕するのと、フレッドがそんな声を上げるのはほぼ同時だった。 「よし! 後は任せろ!」  それを聞いて、今度はグロウが走り出す。  センサー機能を失ったLSK0はあまりにもろく、ただ一方に向かってだけ銃を乱射するでくの坊になりはてていた。  だからグロウは正面は避け、廊下から隣の部屋に入り、別の扉からLSK0の後ろに回り込むと、その上部に向けて思い切り跳び蹴りを食らわせた。  キャタピラの小さいLSK0は、力任せのグロウの跳び蹴りになすすべもなく、銃を構えたまま倒れ込む。 「ついでに、スイッチも切っとけってね!」  弾んだ声で呟くと、グロウは先ほど投げた金塊を取り上げて、今度はそれでCPUが入っていそうな部分をたこ殴りにする。  ――そこまでされては、さすがのセキュリティロボットも、なすすべもなかった。  しばらくはむなしく地面を打ち抜いていたが、きゅううんと少し哀愁漂う音を立てながら沈黙する。 「うぉっしゃ! 勝――利!」 「喜んでる場合じゃない! 出るぞ!」  勝利の雄叫びをあげるグロウに、銃をベルトに指したフレッドが鋭い声を上げた。 「後三分でリミット時間だ!」 「うおっ」  すでに駆け出しながらのフレッドの忠告に、慌ててグロウもその後を追った。     □ ■ □ ■  やきもきして待つ俺達に、グロウからの通信が入ったのはタイムリミットである三十分を大分過ぎた零時半すぎのことだった。  他の全部の班から通信から無事を知らせる通信が入るのに、グロウの班からはリーダーであるグロウとフレッドだけが戻らないと言う通信が入ったっきり。  しかも彼らも、先に逃がされたから、グロウとフレッドがどうなったのかはわからないという状態だった。  本当に、あの待ってるだけって言う時間は本当に心臓に悪いね。  じりじりと鳴らない無線機を睨んで、重い沈黙の中ジェイさんとジョンとそしてその他の待機メンバーと祈るような思いで通信を待っていたんだ。 【……イ】  すると不意に、ジェイさんのヘッドセットが音を上げた。
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