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「家に帰れって?」
それに、ジョンやグロウ、ジェイさんまでが頷いた。
「前のミッションで結構な額が手に入った。三年間学校に通うのに十分なくらいな。それを手にチームを出て行ったメンバーも結構多いんだ」
ジョンが言うので、俺は焦って言葉を紡いだ。
「ちょ……ちょっと待ってよ。それと俺が家に帰るのってどういうつながりがあるわけ?」
「もうチームの誰も、お前をよそ者とは思ってないってことだ」
ジョンから返ってきた言葉に、俺は目を見張った。
あのフェイの言葉をジェイさんから聞かされて以降、俺が気にしていたことをジョンも気づいていた、ということか。
それにはもちろん驚いた――でも。
「やだよ。帰りたくない」
「――逃げるのか」
ふと、グロウが言った。
「お前が親父さんとうまくいってないってのも知ってる。でもずっとここにいて親父さんと向き合わないって言うのは、逃げだろう」
グロウの珍しく真っ当な言葉に、俺は唇を噛んで俯いた。
――わかってるよ。俺だって。ここにいることが解決にならないことくらい。
でもあの石頭と何か話をしたってなにも解決できる気がしないんだ。
俺の意見なんて聞かないであいつの考えを押しつけてくるに決まってる。
「……別に一度や二度の話し合いで何とかなると俺達だって思ってない。でも話し合いをしなかったら永遠にわかり合えない」
ジェイさんがゆっくりと歩み寄ってきて、ぽん、と俺の頭に手を載せた。
「そもそも、お前が嫌だと思うこときちんと伝えたのか?」
「言った」
俺は子供のように――いや、真実子供だったんだけど――頬を膨らませて答える。
それを見てジェイさんが面白いものでも見るように小さく吹き出したんだけど、ぐしゃぐしゃと頭を撫でてくる。
「その感じじゃ、きちんと言えてなさそうだな」
「だって、あっちが聞いてくれないんだ!」
「そりゃただ嫌だ、やりたくない、だけじゃ親父さんだって聞いてくれないだろう。でも論理的に話せばあるいは通じるかもしれない」
その言葉に、俺は当時すでにかなりの長身になっていたジェイさんを見上げた。
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