4)会うは別れの始めなり

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 そうして季節が変わって冬が来て、春が来た。  日本では本当に別れと出会いの季節が。  その頃デザート・ウルフはもう二回ほどロサンゼルスの悪徳業者やビバリーヒルズのあくどい金持ちの家に盗みに入って、そのお金をスラムへばらまく、というのをしていたから、ちょっと名が売れてきた頃で。  特にリーダーのジョンはあの赤い髪の色とたてがみみたいなつんつん頭は続けていて、『RedLion』なんて呼ばれるようになっていた。  新聞にも姿が載るようになったりして、結構名を上げ始めていたんだ。  まあ、ライオンに率いられるオオカミってのも、猫科と犬科がコラボしちゃっててもう意味不明なんだけど、そこはそれなんだろうね。  新聞とか雑誌とかはとにかくキャッチーな言葉が得られればいいんだろうから。  それだけ実績を重ねてくるとミッションの時の判断力や運動神経なんかから実働部隊としてのグロウの実力はかなりチームで認められてきていたし、作戦立案や情報処理の能力がずば抜けているジェイさんもまたチームになじんできていた。  またジェイさんがうまく立ち回って、決してジョンをないがしろにしないようにしていたのも良かったんだと思う。  あくまでジョンがトップで、参謀の位置としてジェイさんが立つ。  そうすることで変な波風は立たつことなく、だんだん二人はチームに受け入れられていったんだ。  そんな中で異変が起こったのは三月の終わり位の頃だったと思う。  日本だったら梅が全盛で、桜のつぼみが膨らみ始める頃かな。  相変わらず変装しつつも街を歩いていたジェイさんがふと足を止めたんだ。 「――あの車」 「うん?」  隣を歩いていたジョンも足を止めジェイさんの視線の方角を見た。  その頃、人望はあるけど頭はちょっと、という感じのジョンは、頭がいいけどもきちんと自分を立ててくれるジェイさんがお気に入りで、どこに行くにも一緒だった。  ジェイさん自身はあまり外に出たがらなかったんだけどなにせ相手は自分が建ててるリーダーだからね。  誘われたら出るしかなくて変装はしつつも後をついて歩いてたんだ。
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