62人が本棚に入れています
本棚に追加
「昨日も見た気がする」
「そうか?」
彼が指した先には、何の変哲もないセダンが止まっていた。
フォード製の地味なダークグレーの車だった。
「誰かこの辺の住人が買ったんだろ。」
ジョンののほほんとした指摘に、ジェイさんは小さくため息をつくと、いこう、と彼を促した。
そろそろ抜けるべきかもしれない――後で聞くところによると、すでにこの時ジェイさんの中でそんな考えが固まりつつあったそうだ。
だけどきっかけもなくチーム運営もうまくいっていて、穏やかな毎日が続いていたから。
ジェイさんもグロウもチームの居心地が良かったのもあり、もうこのままなにもないんじゃないかってそう思う気持ちがあったのもまた、事実だったみたい。
でも、ジェイさん達を狙う誰かは、決して諦めたわけじゃなかった。
ただ居場所がわからなかっただけ。
それを彼らは見つけたのだ。
義賊を取り上げた、新聞の記事の中で――
□ ■ □ ■
その日、相変わらずジェイさんを連れて歩きたがるジョンと、グロウ、それと最初のミッションでどうしてかグロウと意気投合したフレッドとが街を歩いていた。
行き先はフェイの家。
試験期間でしばらくアジトに立ち寄れなかった俺が、母さんの用事でフェイの家に行くって言ったら、じゃあ久々にあの闇医者をからかいに行こうという話になっていたんだ。
それで彼らは、移動していた最中だった。
最初のコメントを投稿しよう!