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パンッ
――小さな小さな音だったって言っていた。
何かが破裂するような音がして、驚いてその音の方をグロウが見たら、もう一つ二つ同じ音が重なった。
なんだ?
思う彼らの横で、ぐらりと朱色の頭が揺れた。
それとほぼ同時にもしゃもしゃの金髪の頭もがくんと落ちた。
「お、おい」
戸惑うグロウにいち早く事態を察したジェイさんは鋭く叫んだという。
「路地に隠れろ!」
言って、グロウの腕を引いて路地に入ると、置いてあった、冬はホームレスの暖房代わりになるドラム缶を盾に息を潜めた。
「俺らだけ隠れてどうするんだ! あいつら助けないと!」
出て行こうとするグロウをジェイさんはその細身から想像できないくらいの力で引いて、その場に引き倒した。
「俺達まで出て行って撃たれたら、誰が二人を病院に連れて行くんだ!」
その一言に、グロウは押し黙った。
代わりに拳を、手のひらから血が出るくらいに握りしめて、襲撃者が去るのを、待つ。
少しして、エキゾート音と共にタイヤを鳴らした車が大きくUターンして去っていくのが見えた。
フォード製の、ダークグレーのセダンだった。
「行くぞ!」
やっぱり――
そんな思いをひた隠しにしながらジェイさんはグロウの腕を引き、通りに飛び出した。
そして二人は凍り付く。
「うう……」
通りは、血の海だった。
かろうじてフレッドだけはうめき声を上げていたけれど、ジョンは言葉一つあげていない。
「……フェイだ!」
かすれた声で、グロウは叫んだ。
「フェイのところ、連れてくぞ、ジェイ!」
その言葉に、血の赤に目を奪われていたジェイさんは正気に戻った。
「あ、ああ……」
震える声で頷くと、比較的軽いフレッドを担ぎ上げた。
ジョンの方はグロウが担ぎ上げる。
そうして半年以上前、ジェイさんがグロウをそうしたように、二人はジョンとフレッドを引きずるようにしてフェイの病院に連れて行ったんだ。
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