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私は止まっていた時間を進めるように首を左右に振って意識を正常にする。
「何?」
「大丈夫か?」和哉の吐息が私の頬にかかる。
心臓が勝手にビートを早めやがる。
「だ、大丈夫…」
和哉は私の様子に安心したのかまた椅子に腰をおろす。
「良かった」
「和哉…あのね…」
「何?」と和哉は優しく私に微笑みかける。
「私、お医者さんになったんだ」
「は?本当に?」
「うん」そう言って笑顔で頷く。
「まさか…。本当になるとは…」
「和哉の残してくれた道標通りに進んだら国立の医学部に合格しちゃった」
「そっかぁ…」
「んでさ、来週からここの近くの大学病院で研修医として働くんだ」
「は?それホントか?」和哉は眉間にシワを作る。
「うん。ホント。少しでも和哉の努力を理解したかったし、それに近づきたかったから…」
「そっかぁ…」
「でも家がないの…だから退院したらネットカフェに行かないといけないんだ」
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