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行って欲しくないのに、傍にいて欲しいのに和哉は出て行こうと部屋のスライド式の扉に手を置く。
『何で、心臓外科の和哉がERにいるの?』咄嗟に出た言葉はこれだった。
私、何言ってるんだろう?
ちっとも可愛い気が無い。
“目覚ますまで居てくれてありがとう”とか言えないのかよ…。
和哉は私の言葉に一瞬、体の動きを停止させる。
『えっと…それは…』そう吐き出した和哉の声は何故か掠れていた。
『それは…何?』私は和哉の背中に声を投げ掛ける。
『日本人は俺しかいなかったから通訳としてだな…』和哉は後頭部をかきむしる。
『じゃ~今、私達が話してる言葉は何?』
『………』和哉は扉のステンレス製のとってを握ったまま押し黙る。
『ねぇ…和哉…何?』
『………』
『和哉?』
和哉はまた後頭部をかきむしった後、私の方に振り返り扉に寄り掛かる。
『英語』和哉は天井を見上げながらそう言った。
何かばつが悪そうな和哉の表情が可愛く感じた。
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