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「いや…それは…」
「和哉が嫌なら別に良いけど?」
「したいよ…。栞と結婚…だって本音は栞を独り占めにしたいし…」
「ならちゃんと言えよ…」
「でも…」
「デモとかテロとかストとかさっきから何?ウジウジして!」
「ご…ごめん…」
「ホントに悪いと思ってる?」
「う、うん」和哉は小刻みに数回、首を振る。
「ならちゃんと言って!」
「えっ?何を?」
「だから婚姻届出すんでしょ?」
「そうだけど…」
「ならその前に言う事があるじゃん…」
「栞ってやっぱり可愛くない」そう言って和哉は笑った。
可愛くない私は「どうせ、私は可愛くないですよ」と言おうと思ったけど「どうせ」と言った時に口を塞がれて言葉が出なかった。
「煩い口黙らせた」和哉は私にキスをしてからそう言った。
そして「Will you marry me?」と歌うように私に囁いた。
和哉との初めてのキスはぎこちなくて不器用な味がした。
あの結婚式の後に流した冷たい涙とは違う温かい涙が私の頬を流れた。
『Tear』は引き裂くって意味らしい。
でも『Tears』と『s』をつけると『涙』という意味になる。
和哉と出会って涙を流す時には2つの引き裂かれるような胸の苦しみがあるのだと知った。
1つは寂しさを感じて胸が締め付けるられて引き裂かれるような辛い胸の苦しみ。
もう1つは幸せを感じて胸が締め付けられるような引き裂かれるような温かい胸の苦しだ。
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